デモンストレーター臼井裕二が注目選手の滑りを解説【堀田聖子】
ライダー達によって数多くのラインが刻まれたフリーライド+ジャンプ種目で、高いパフォーマンスを見せた注目選手をピックアップ。解説してくれるのは8期連続のデモンストレーター、SBM 2nd GAMEのジャッジも務めた臼井裕二。今回は、春の柔らかい雪でも力強いカービングを披露した堀田聖子選手を解説する。
シャープなターンをみせてくれた堀田選手。やや高い姿勢からナタを振り下ろしたかの様なエッジングをしています。一発でエッジングを決めようとするボード操作は潔く勢いがあります。堀田選手はターンの意識が高く、メリハリのある良い滑りをみせてくれました。
ゴール直前では惜しくもミスをしてしまいましたが、ここで気を付けたいのが、高めの切り替えのポジションからヒザをピンと張ったまま落下方向(斜面下方向)に軸を落とし過ぎることで起こるミスです。
ヒールサイドターンは気合が入り過ぎると突っ込み過ぎ、ターン始動直後にノーズに強いテンションがかかる。そうなるとターン後半部分でエッジが雪面に潜りやすくなり、そのまま雪面にエッジが張り付いた状態が続くと、重たい切り替えになります。微調整が難しいヒール側のエッジングはリカバリーも難しい。ヒールサイドはヒールカップなどのマテリアルの剛性の影響と、人の体の構造上使える関節が少ないと言う点からプレッシャーが強くなり過ぎる傾向があるのです。
対策としては、ヒザをサスペンションの様に使うこと。そして、ターンの外方向へ逃げていく春のザラメの雪を、乗り手自らが「操作の壁」を作りながら滑ること。
簡単に言うと「蹴る・張る」動作よりも「溜める・抑える」といったボードコントロールの方が春雪に向いていると言うことです。ポイントはいかにボードの「腹」を上手に使うか。足裏の感覚で説明すると、土踏まず付近を雪面に押し込みながらエッジングをする感覚です。そうすることで減速しづらいターンになり、トリックでは高さを出しやすくなります。また、踏み切りでボードをしっかりポップできるようになるためボードを引きつけやすくなり、グラブの時間が長くなります。メリハリを表現する時など有効ですね。
また、堀田選手のトゥサイドは、ヒザが柔らかく、動くタイミングも素晴らしいです。
切り替えがスムーズな理由は、「ヒールサイドターン後半で足場をしっかり作っている」という所にあります。切り替えにはある程度の反発が必要です。その反発は盤石なターン後半の足場作りから生まれます。タイミングよくヒザをトゥエッジへと動かすためにも「ヒールサイドターン後半の足場作り」は欠かせないのです。足場作りのために、後ろ足の股関節に体重を乗せ、深く曲げてボードを立てましょう。この時ヒザを曲げ過ぎないように注意。また、体の軸(頭)が内側に倒れ過ぎたり、ターン方向のひねりが後半に強くなるとテールがズレるので、気をつけましょう。ヒールサイドはノーズが詰まる現象が起きやすいので、その点にも注意が必要です。
ここで説明したことは非常に大事な操作ですし、ターンをしっかりと最後まで仕上げる必要性はここにあります。これは重要なジャッジングポイントの1つです。
その後の演技の展開としては、両サイドの壁をレギュラーからエントリーをしたり、スイッチから壁にエントリーをしたり、流れのある素晴らしいルーティーンで滑っています。「斜面下へ落ちていく意識」と「ボードをしっかりと曲げてターン弧を描き続ける意識」が現れてる堀田選手の演技をぜひ参考にして欲しいですね。
【着眼点の説明】
ここで、ルーティーンという言葉が出てきたので、競技(種目)を加味しながらもう少し細かく説明します。トリックやターン自体の点数配分はほぼ決まっています。それ以外で差が出てくるのはトリック同士の繋がり、ターン同士の繋がり、ターンとトリックの繋がり、トリックからターンへの繋がり(繋がり=移行のスムーズさ)です。ライン取りやスタイルは個性の部分で評価しています。
「ルーティーン」とは、それらを総合的にみた時の「各選手の表現」ということです。
Photo:Yoshifumi.Shimizu