Message from 東野圭吾

初めてスノーボードに挑んだのは2002年の2月28日です。私は44歳になっていました。周りからは止められました。
いい歳をして無茶をするな、と。スノーボード=危ないスポーツ、というイメージがあったからでしょう。
じつは私自身もかなりビビっていました。ちょっと体験するだけで、これっきりにしようと思っていました。

ところがスノーボードの楽しさは予想以上でした。半分以上の時間を転倒と立ち上がることに費やしたのですが、
たまにうまく滑れた時の快感は、私を虜にしました。

以来十数年、毎年三十日程度は滑っています。大して上手くありませんが、
スノーボードの魅力についてなら、十分に語れるようになったと思います。

そんな私に友人たちが問います。
「おまえさあ、スノーボードばっかりやってるけど、やっぱり、空中でくるくる回ったりとかしてるわけ?」

回ってない、と私は即答します。そんなことはできません。
「だったらあれか。ものすごいでかいジャンプを跳んでるのか」

跳んでない。無理に決まっています。
「じゃあ、何だよ。おまえ、スキー場まで行って、何をやってるわけ?」

滑ってるんだよっ、雪の上を気持ちよく滑ってるだけだよっ──。

スノーボードをよく知らない人と話していると、しばしばこういうズレが生じます。
オリンピック競技の印象が強いからでしょう。そうじゃないんだよ、雪上を気持ちよく滑るのがスノーボードなんだよ、
空中で曲芸をすることだけがスノーボードじゃないんだよ、と声高に言ってもなかなかわかってもらえません。

そこで、ふと思ったわけです。純粋に雪上での滑走能力を競う大会があればいいのにな、と。
速く滑れて、華麗なフォームも披露できる──スノーボードが一番上手いのは誰なのか、を明らかにする大会です。
でも残念ながら、そんな大会はないようです。

ならば作ってみようか、と思い立ったのが今回の企画です。
ど素人の発案でしたが、意外にも専門家の皆さんが賛同してくださいました。そういうのをやりたかったんだよ、と。

スノーボードによって私の人生は大変豊かなものになりました。出会っていなければ、今の私はいなかったでしょう。
この大会は、私からの恩返しでもあります。どうかふるってご参加ください。